- 左: 富山市 / 右: バーゼル・ランドシャフト州とバーゼル・シュタット州
- 日本海沿岸から見た立山連峰 (©富山県)
- バーゼル・ランドシャフトとバーゼル・シュタットの2州
富山県 ― バーゼル地域(2009年)
関東地方 | 富山県
姉妹都市
製薬業で有名なスイスと日本の地域は、どのようにしてより良いもののために緊密に協業するようになったのでしょうか
職人と技術者
中部地方の北の端にあり、日本海と能登半島、立山連峰に囲まれた富山県の人口は100万人を少し超えています。その地勢のおかげで、県土の大部分には、息をのむような立山黒部アルペンルートに象徴される目を見張るような森林、氷河(日本の氷河のほぼすべて)、河川があります。また、ユネスコ世界遺産に指定されている五箇山の合掌造集落などの歴史的な景勝地もあれば、ガラス、木彫、銅器などの職人技からホタルイカの海鮮料理まで、何世紀も続く伝統にも恵まれています。
ただ、外観はともかく、この地域は観光業のみに頼っているわけではありません。実は製造業の中では製薬産業が最も盛んです。その起源は江戸時代に遡り、現在では医薬品生産金額が全国一になっています。高品質な薬を開発するために最新技術を利用しているため、富山県で製造された薬は評価も高く、国内外の医療機関や店舗で取り扱われています。そして、この成功にはスイスが重要な役割を果たしたのです。
医薬品を通じた交流
県の製薬産業とスイスの交流は2006年夏に始まりました。製薬会社を訪問し、企業セミナーに参加し、商談を行うため、富山県薬業連合会がスイス北部のバーゼル市に年一回の「バーゼル視察団」の派遣を始めたのです。
このような交流は現代の製薬業界の加速する世界市場にとって不可欠であり、2009年に富山県関係者はスイスの地域と正式なパートナーシップを築くことを決意しました。同年10月、富山県の石井隆一知事はスイスを訪れ、バーゼル・シュタット州とバーゼル・ランドシャフト州の政府首長と、スイスと日本の州・県レベル初の協力協定に署名しました。すべての関係者は、製剤技術交流や経済交流の促進、ならびに芸術・文化部門における情報・技術交流を促進することを正式に誓いました。これらの分野におけるバーゼル地域の専門性を考えると、富山県が優れた戦略的選択を行ったことは言うまでもありません。
世界の薬都
ドイツ語圏とフランス語圏の境目にあるバーゼル地域は、実はバーゼル・ランドシャフトとバーゼル・シュタットという隣り合う二つの小さな北部の州から成り立っています。手つかずの自然や木々に覆われた丘陵でよく知られている前者ですが、多くの中小企業、世界的企業、一流の研究所がライフサイエンス、精密機器、物流管理などの重要な分野において革新を起こすべく活発に活動している好調な経済圏でもあります。
一方、後者はスイスで最も活力あふれる経済的エコシステムの一つを持ち、高名なバイエラー財団やバーゼル美術館に象徴される比類なき文化施設を備えた多言語都市です。このような空間配置を持つバーゼル地域の生活の質は世界最高水準で、労働者は全く異なる二つの環境を行き来しながら生活し、働くことができます。
600年の歴史を誇る大学のおかげで、バーゼル市はルネッサンス時代から商業のハブ(機軸)であり重要な文化の中心でしたが、20世紀になってからは化学・製薬産業のハブとして頭角を現しました。「世界の薬都」とも呼ばれるバーゼルには現在多くの製薬、化学、バイオ関連企業や研究機関が集まり、世界最大の製薬企業であるロシュとノバルティスも本部を置いています。
発展を続けて
2010年以来、富山・バーゼル医薬品研究開発シンポジウムが2年おきに開催されています。富山県に拠点を置く企業は、商談を行い、技術提携を結ぶなど、スイスのパートナーと新薬開発で協力する数え切れないほどの機会を得ています。
最近では2018年に、富山県立大学、富山大学、バーゼル大学がお互いの学生に新しい学術交流の機会を提供することに合意しました。さらに、2009年に石井知事とスイスの2州との間で締結した協定等について、バイオ技術交流の促進や大学間交流の促進など、内容を充実させた新たな協定を締結しました。富山県で開催した協定締結式では、バーゼル・シュタット州のコンラディン・クラマー議員と石井知事が協定書に署名し、富山県とバーゼルの関係を強化するのみならず、日本・スイス両国民の利益になるよう、医療の進歩と革新に向けた更なる活動を宣言しました。