• 左: 松本市の「烏城」 / 右: グリンデルワルト (©ユングフラウ地方観光局 / davidbirri.com)
  • スイスのグリンデルワルト (©ユングフラウ地方観光局 / davidbirri.com)
  • 松本市の「烏城」

松本市 ― グリンデルワルト(1972年)

中部地方 | 松本市

スイス・日本間の2番目の姉妹都市の起源は、1972年のスイス人オリンピック審判員との幸運な出会いへと遡ります。

アルプスから世界へ

長野県松本市(©松本市)

松本市は日本及び長野県のほぼ中央に位置し、北アルプスに代表される雄大な山々に囲まれています。400年以上も前に建てられた国宝・松本城で知られているこの都市には、歴史、文化、温泉、地元の名物(おいしい蕎麦など)から、スキー、ハイキングまで、幅広い魅力があります。

松本市の上高地(©松本市)

松本市は交易や文化交流を通じて古くから栄えてきました。19世紀以降、進歩的精神を持ってその豊かな文化を培ってきました。長野県では1998年に冬季オリンピック大会が開催されていますが、実はスイスの村と松本市の特別な関係は、それ以前に日本で開催された別のオリンピック大会に起源があるのです。

スイス人審判員、協議をまとめる

松本市とスイスとの関係は、フィルスト鉄道のマネージャー、ローランド・ルーディンヌ氏が札幌冬季オリンピック大会でノルディック複合競技の審判長を務めるためスイスから来日した1972年初頭に遡ります。日本滞在中、彼は日本交通公社の兼松学会長から連絡を受け、故郷のグリンデルワルトと長野の安曇村との姉妹提携のアイデアを打診されました。

グリンデルワルトの記念銘板、2014年(©グリンデルワルト村)

兼松氏はどこからこのアイデアを思いついたのでしょう?比べてみると、人口や産業構造から山岳環境や風景まで、基本的に二つの村は驚くほどよく似ていました。オリンピック大会終了後まもなく、東京でルーディンヌ氏と安曇村の福島清喜村長が面会し、双方の自治体と住民は姉妹提携の提案を大いに歓迎しました。まもなく日本の人たちは、スイスで最も人気のある国際的な休暇先・旅行先の一つであるグリンデルワルトを知ることになったのです。

ヨーロッパ・アルプス登山発祥の地

グリンデルワルトのアイガー

グリンデルワルト村は、ベルナーオーバーラント地方の海抜1,034メートルに位置する心地よい緑豊かな盆地の中にあります。ヴェッターホルンとアイガー北壁を擁する圧倒的な山岳風景に囲まれた村には、ユングフラウ地方最大のスキーリゾートがあります。このため、グリンデルワルト周辺の風景はアルプスのドキュメンタリー映像をはじめ、ジェームズ・ボンド(「女王陛下の007」、1969年)やスター・ウォーズ(「エピソード3―シスの復讐」、2005年)などのアクション映画にたびたび登場しています。

グリンデルワルトのアイガー(©ユングフラウ地方観光局 / davidbirri.com)

グリンデルワルトの山岳地にある牧場(©ユングフラウ地方観光局 / davidbirri.com)

元々グリンデルワルトの近代史は、英国人登山家が定期的に訪れるようになったため19世紀半ばからこの地方で盛んになったアルプス登山と関わりがあります。道路や鉄道の建設が進み、19世紀終わり頃には村へのアクセスが大幅に改善されたため、さらに冬の観光も始まりました。1908年にはヴェッターホルンにアルプス初のケーブルカーが開設され、1912年には鉄道がクライネシャイデックを経由してユングフラウヨッホまで開通しました。現在でも、「トップ・オブ・ヨーロッパ」はヨーロッパ最高地点にある鉄道駅であり、万年雪や氷を見たい人々にとって世界的に有名な旅行先となっています。

45年、そしてこれからも

2005年: 姉妹都市提携の更新(©松本市)

両村による会合のわずか2か月後、1972年4月20日に姉妹協定が締結されました。安曇村は2005年に松本市と合併し、新・松本市が姉妹提携を引き継ぎました。松本市民は、相互訪問や青少年交流(地元家庭での受け入れ)、スキーや音楽関係のイベントなど、過去30年間定期的に開催してきた事業を喜んで継続することを再確認したのです。

2014年: グリンデルワルトからの訪問団(©松本市)

その後も姉妹関係は順調に推移しています。例えば2011年には、菅谷昭市長率いる訪問団に敬意を表し、山岳地にある両自治体の絆を末永く深めるため、スイス側の村に「松本クラブ」が創設されました。さらに近年でも、2014年の日本・スイス国交樹立150周年の機会に相互に訪問するなど、継続的な交流が続いています。2017年4月25日、26日には、ジャン=フランソワ・パロ駐日スイス大使と、グリンデルワルトのクリスチャン・アンデレッグ村長率いる26名の訪問団が、45年間の美しい友情を祝うために松本市を訪れています。オリンピックの審判だったルーディンヌ氏は大いなる遺産を残したのです。

2014年: グリンデルワルト観光局関係者に会う徳仁皇太子殿下(©松本市)

2014年: グリンデルワルトからの訪問団(©松本市)