• 左: ふる里村 (©長柄町) / 右: グランヴォー (©スイス政府観光局 / 牧野祐子)
  • ふる里村のロングジップスライド(©長柄町)
  • グランヴォー、ブール・アン・ラヴォー (©スイス政府観光局 / 牧野祐子)

長柄町 ― ブール・アン・ ラヴォー(1979年)

関東地方 | 長柄町

1970年代初めに日本で最も有名な人物がスイスを訪問して以来、ラヴォー地区の静かな村と千葉県の町は友好の杯を重ねています。

千葉のユートピア

生命の森リゾート(©長柄町)

東京から南東方向に50キロほど離れた房総半島の中心部に位置する長柄町は、典型的な日本の郊外にある小さな町です。農業で生計を立てる町民が多く、関東地方で最大規模のアース式ダムがあり、ダム湖は桜の木に囲まれています。地理的条件に加えて、長柄町には都会の喧騒から逃避するには絶好の場所、ふる里村があります。広さ3.3平方キロメートルの郷愁を誘うリゾート村は森の真ん中にあり、ホテル(500人収容)、スポーツやトレーニングのための施設、プール、レストランを備えています。

千葉県長柄町(©長柄町)

「生命の森リゾート」とも呼ばれている村は、人間と自然が平和に共存できるユートピアの再生を目指しています。実はふる里村の歴史にはスイスが大いに関わっているのです。

皇族のラヴォー地区訪問

昭和天皇・皇后がグランヴォーでポルタ家の人々と面会、1971年(©スイス政府観光局 / 牧野祐子)

1971年の秋、昭和天皇皇后両陛下は外遊という前例のない公務を行いました。日本史上初めて、今上天皇と皇后がヨーロッパを18日間訪問し、7か国を訪れたのです。1971年10月19日、両陛下はスイスを訪れ、ジュネーブで赤十字国際委員会のマルセル・ナヴィル総裁に出迎えられました。

天皇行幸を記念して (©スイス政府観光局 / 牧野祐子)

しかし同日、昭和天皇はジュネーブ湖岸にある有名なブドウ畑も見たいと強く希望していました。現地へのアクセスと警備を考慮した結果、両陛下はクロ・サンタムールを訪れ、地元で最高級の白ワインによるもてなしを受けました。このブドウ畑の持ち主であるサムエル・ポルタは、当時グランヴォーという魅力的な近隣の村で村長を務めていました。

理想郷でのワイン造り

グランヴォー、ブール・アン・ラヴォーからのレマン湖の眺め (©スイス政府観光局 / 牧野祐子)

ジュネーブ湖の北東岸に静かに存在するグランヴォーは約60ヘクタールのブドウ畑を持ち、ワイン造りを行っている小さな村です。ユネスコ世界遺産に登録されているラヴォー地区の他のブドウ畑と比べると大きさは控えめですが、そのワインの質の高さは専門家の間でよく知られています。村は湖の近くにあるため、ブドウは太陽の光、湖からの反射光、段々畑の壁に蓄えられた熱を吸収して育ち、ほのかにフルーティーで辛口のワインになります。

グランヴォー、ブール・アン・ラヴォーの静かな街並み(©スイス政府観光局 / 牧野祐子)

その一方、ワイン醸造学以外でも、グランヴォーはラヴォー地区の宝石の一つとして知られています。素晴らしい景色、美食、歴史的な住居、静かな環境を見れば、その理由がおわかりになるでしょう。

未来に乾杯!

(©ブール・アン・ラヴォー村)

1979年: 両村がグランヴォーで姉妹提携(©ブール・アン・ラヴォー村)

行幸を機に、グランヴォーは日本との強い絆を保ってきました。8年後、グランヴォーに強い関心を示していた長柄町ふる里村当局とグランヴォー町役場が連絡を取り合い、1979年7月に両村は姉妹協定を結びました。そして、訪問団はもちろん、ワインの交換も数多く行われることになりました。在日スイス大使館は、この千葉県のリゾート村に旧スイス大使館の建物を寄贈することによって、姉妹提携の実現を促しました。

ふる里村にある旧スイス大使館の建物(©長柄町)

2011年にグランヴォーはブール・アン・ラヴォーに統合されましたが、アラン・パリゾー村長と住民は東日本大震災と津波の被害者を支援するため、少なからぬ額の義援金を贈りました。

(©ブール・アン・ラヴォー村)

最近では、47年前に昭和天皇をお迎えした村長の孫でブドウ農家のイヴ・ポルタ氏が、2018年9月に本田悦朗・駐スイス日本国大使を彼のブドウ畑に招待しました。両氏はブール・アン・ラヴォーと長柄町の強い絆に、そしてスイスと日本の人々の友情に乾杯しました。

2020年7月1日、パロ 大使は、長柄町のリソルの森(旧・長柄ふるさと村)にてスイスのかつてのグランヴォー村との友好関係から生まれた"グランヴォースパヴィレッジ”のオープニング記念式典に、長柄町の清田町長、リソルの森総支配人の佐野氏、千葉大学の三谷教授とともに出席しました。玉川アルプホルン クラブによる演奏、スイスのシャレーを彷彿とさせる木造の小屋、レマン湖という名のスイミングプール、現在は和食処翠州亭として残っており、国の有形文化財として登録されている旧スイス大使館の建物のお披露目などが行われ、スイスを体感できるイベントとなりました。今後も、日本とスイスの友好の杯が重ねられていくことでしょう。

中央:パロ大使

左から: リソルの森総支配人 佐野 直人氏、パロ大使、長柄町町長 清田 勝利氏、千葉大学 教授 三谷 徹氏

玉川アルプホルン クラブ

醸造所で本田悦朗大使を案内するイヴ・ポルタ(©ブール・アン・ラヴォー村)

(©ブール・アン・ラヴォー村)