• (左: ©スイス・モントルーマリーナ / 右: ©Kazushige Nakajima)

葉山マリーナヨットクラブ ― スイス・モントルーマリーナ(2014年)

関東地方 | 葉山町

日本で最も格式の高いヨットクラブの一つが、なぜ海のないスイスのマリーナと姉妹協定を結んだのでしょうか。

大仏に見守られてセーリング

Audi NIPPON CUP 2018 (©Kazushige Nakajima)

葉山マリーナヨットクラブ(HMYC)では、相模湾の反対側に富士山を望むという、おそらく最も日本らしい風景を見ながらセーリングの練習ができます。1964年の東京オリンピック競技大会を機に神奈川県鎌倉市に近い葉山の鐙摺港で創立されたヨットハーバーの所在地は、日本で初めて娯楽としての舟遊びが行われた場所です。非営利団体であるHMYCは会員・一般の両方に向けて、レースや技術支援などを通じてヨット関連活動の安全を図ることや、海上安全教育を行うことを目指しています。

葉山マリーナ (©Junichi Hirai / バルクヘッドマガジン)

Audi NIPPON CUP 2018 (©Junichi Hirai / バルクヘッドマガジン)

Audi NIPPON CUP 2018 (©Kazushige Nakajima)

200を超える会員の中には、関東地方で最も経験豊富で熱心なセーラーもいます。彼らの献身ぶりは驚くほどで、時には悪天候をものともせず、年間20以上のレガッタを開催しています。また、クラブが毎年開催する葉山マリーナ・インターナショナル・フレンドシップ・レガッタは東京の外国大使館職員のチームによる競争です。在日スイス大使館の強豪チームも毎年レースに参加していますが、それ以外にも、HMYCと海のないアルプスの国には驚くべきつながりがあるのです。

葉山マリーナ・インターナショナル・フレンドシップ・レガッタに参加するスイス人セーラーたち (©Kazushige Nakajima)

レース後に喜び合うスイスチーム (©Kazushige Nakajima)

相模湾からジュネーヴ湖へ

2014年7月6日、ある重要な目的のために、HMYCの荒川博人副代将と約10名の会員がスイス西部のジュネーヴ湖のほとりにあるモントルーを訪れました。スイスと日本が修好通商条約を結んでから150周年を迎え、HMYCが50周年を迎えるのを記念して、その晴れた日に、日本人セーラーは友人であるスイス・モントルーマリーナ(SNMC)のミシェル・デトレイ会長と姉妹提携協定書に署名し、定期的に合同セーリングや技術交流を行い、スイスと日本のセーラー同士の真のネットワークを築くことを誓いました。

姉妹提携式典で旗を交換する荒川博人とミシェル・デトレイ (©スイス・モントルーマリーナ)

株式会社葉山マリーナーの長岡紀雄社長が証人として姉妹協定調印を祝福 (©葉山マリーナヨットクラブ)

新たに姉妹クラブとなった会員たちがレマン湖クルーズを楽しむ (©スイス・モントルーマリーナ)

前田隆平・駐スイス日本大使とモントルー市議会議員カレブ・ヴァルター氏出席の下で開催された式典に続いてスイス式バーベキューが行われ、さらにスイス側クラブのヨットで湖をクルーズしました。荒川氏はこれ以前にも現地の友人とジュネーヴ湖を訪れたことがありましたが、その時は姉妹ヨットクラブ員としての新鮮な気持ちでモントルーと湖岸を眺めていました。

マリーナと山々と音楽

モントルーのクラランにあるバセ港 (©スイス・モントルーマリーナ)

モーターボート主体のモントルー・ヨットクラブとヨット主体のモントルー・ヨットサークルがバセ港に共同クラブハウスを建設するために作った組合から、1970年5月25日にSNMCが創立されました。元の両団体と120名の会員は2002年に統合しますが、クラブはいまでもセーリングとモーターボートの両方の協会に所属しています。地元でウォータースポーツやレジャーセーリングを盛んにするため毎年多くのレガッタが開催され、国内外から大勢のセーラーが集います。SNMCのジュニアメンバーだった選手がアメリカズカップやウィットブレッドといった国際大会で優勝していることから、その競技レベルはかなり高いはずです。湖で練習しているクラブにしては大したものですが、その環境を考えると強さの理由は明らかです。

レマン湖上でレースを楽しむスイス・モントルーマリーナの会員たち (©スイス・モントルーマリーナ)

ジュネーヴ湖とブドウ畑、そして雪に覆われたアルプスの間に位置するモントルーは、リラックスしたい人たちにとって人気の旅行先です。近くにあるシヨン城、壮大なフェアモント・ル・モントルーパレス、モントルー・ミュージック&コンベンション・センター(2M2C)には、花が飾られた日当たりのよい湖畔の道路を通って行くことができます。人口3万人に満たない都市でありながら、モントルーは世界的に有名です。1967年に始まったモントルー・ジャズ・フェスティバルは、時代を最も象徴する音楽家たちを各国から集め、世界的な現象となりました。クイーンやデヴィッド・ボウイといったアーティストたちがここで多くのアルバムを録音し、パパラッチの目を逃れて静かな生活を送りました。モントルーを訪れる目的はセーリング以外にもいくらでも挙げられます。

モントルー近くのシヨン城 (©スイス政府観光局)

モントルーの湖岸にあるフレディ・マーキュリーの像