• 写真: ©バリー財団 / ワッペン: ©東京消防庁

東京消防庁のセント・バーナード犬のワッペン

関東地方 | 東京都千代田区

東京のレスキュー隊全員の肩にいる犬 、バリーとは?

人間じゃなくても、価値観は同じ

出動する東京消防庁の消防士たち

東京で緊急事態が発生したら、ただちに救助車に乗りこみ、サイレンを鳴らし、自身の命の危険を顧みず炎や煙の中をかいくぐって危機に瀕している人々を救助する人たちがいます。東京消防庁(Tokyo Special Rescue Team)の消防士は、日本のその他の地域や世界中の同志たちと同様、勇気と自己犠牲精神の象徴そのものです。そんな彼らが知っていること、それは、万が一士気が下がることがあっても、シンボルであるバリーが彼らを見守っていてくれるということです。

左から右へ: 山岳救助隊、ハイパーレスキュー隊、特別救助隊、水難救助隊 (©東京消防庁)

事実として、1973年以来、レスキュー隊員たち(そして、特別高度救助隊や海難救助隊、山岳救助隊も同様に着用)のオレンジ色のユニフォームに付けられたワッペンには、誇らしげな顔をしたセント・バーナード犬の姿があります。なぜ、わざわざスイスのセント・バーナードがデザインに起用されたのでしょうか?それを説明するには、200年以上前、スイス ・アルプスで素晴らしい偉業を成し遂げ、その行動が人命救助を職業とする人たちの士気を高め、ついには救助のシンボルとなったある犬の実話を語らなければなりません。

「人命救助犬」

ヴァレー州にあるグラン・サン・ベルナール・ホスピス (©Iris Kuerschner)

セント・バーナード犬は、スイスのヴァレー州 (Switzerland) とイタリアの国境にあるグラン・サン・ベルナール峠 (2,469m) が原産の犬種です。これらの土地におけるこの犬種の繁殖は、中世にアウグスチヌス会の修道士たちによって建てられた救護所で始まりました。大変性格の良い犬種で、当初は荷物を運ぶのに重宝されていましたが、雪崩で雪に埋もれてしまった登山者たちの救出のための訓練もすぐに行われるようになりました。

救助犬バリー(1800-1814)のイラスト

そうした救助犬の中でも、とくに名高く伝説にもなっているのが、バリー・デア・メンシェンレター (1800-1814) です。同期の救助犬たちと比べて任期は短かったですが、それを補って余りあるほど、救助で驚くほどの才能を発揮しました。言い伝えによれば、バリーは40名以上もの人命を救助したそうです!中でも最も勇敢な行動として、凍てついた洞窟の中にいた小さな少年を発見したバリーは、なめることで少年の身体を温め、彼を背中に載せて近くの山小屋にまで運んでいきました。地元の人たちはこの犬の素晴らしい貢献に感謝し、バリーの死後、その遺体を保存してベルンの自然史博物館(Natural History Museum)にて展示しました。現在でも、バリーはその場所で誇らしげに立っています。

バリーの精神は生き続ける

©バリー財団

その後、その犬種の主な繁殖場所は救護所ではなくなり、バリー財団によって管理されるようになりましたが、夏季の間にサン・ベルナール峠を訪れる観光客は今でも、人懐っこい犬たちを連れてハイキングや絶景を堪能しています。そうした犬の中で2004年生まれの一頭には、高名な先祖と同じ名前が付けられました。セント・バーナード犬の物語を展示している、スイスのマルティニにあるバリーランド(Barryland)という博物館には、この素晴らしい”四本足のお友達”が自由に歩き回ったり、来館者たちと遊べるよう、屋外には囲われたスペースが設けられています。

©バリー財団

©バリー財団

©バリー財団