- FREITAG バッグのコンポーネント (©FREITAG)
- リトル・トラッキン・グッズ (©FREITAG)
- FREITAG 東京銀座店 (©Kentaro Takahashi)
フライターグ(FREITAG)
関東地方 | 東京都中央区
建築・デザイン
思いもかけないコンセプトから生まれたスイスのバッグ・ブランドは、この20年でゆっくり、しかし確実に日本の都会派の若者たちの間に定着しました。
銀座の異端児
東京の高級ショッピングやエンターテインメントで知られる地区、銀座一丁目のとある通りの角に、ラグジュアリーな周囲の中でひと際目立つ店舗があります。打ちっぱなしのコンクリートの壁と床、鏡、リサイクル材料でできたモジュール式シェルフ (スイスデザイン賞)、そしてアトリエのような雰囲気。2011年の開店以来、このスイスのブランド、フライターグ(FREITAG)の日本初のフラッグシップ・ストアは、無数の好奇心にあふれた人たちの関心を集め、その多くは愛用者となっています。
とはいえ、最大の魅力はあくまでそこで売られている製品です。きわめて独創的なデザインと創造的プロセスより生み出されたバッグやアクセサリーは人気を博し、現在では全世界で350を超えるパートナー店と24のフラッグシップ・ストアで扱っています。
FREITAGの革新的なコンセプトと成功を理解するには、この店舗のデザインに根底からインスピレーションを与えた場所 – 1990年代初頭の、チューリッヒの工業地帯にあったアパート – まで時を溯る必要があります。その住人こそ、二人のグラフィック・デザイナー、マルクス・フライターグとダニエル・フライターグでした。
防水シートと才能
1993年、2人の兄弟が自分たちのクリエイティブな作品を入れて運ぶための機能的で、撥水性がある頑丈なバッグを探していた時、ふと目に留まったのが、自分たちのアパートの目の前のチューリッヒ幹線道路をやかましく走っていく色とりどりの自動車の流れでした。そこから2人は、使い古しのトラックの幌や廃棄された自転車のチューブ、車のシートベルトでメッセンジャー・バッグを作ることを思いつきました。第一号のFREITAGバッグは、2人が共同生活をしていたアパートのリビングルームで生まれました。つまり、どれもがリサイクル材料で作られた、1点物なのです。
最初のモデルのメッセンジャー・バッグ、F13 TOP CAT 誕生以降、スマートフォンやラップトップ用スリーブ内臓のバックパック、ハンドバッグ、ショッピングバッグからトラベルバッグに至るまで、さまざまな「物を運ぶ」ニーズに対応した80を超えるモデルが生み出されました。トラックの幌はすべて解体された後、チューリッヒのエルリコンにあるファクトリー、Nœrdで洗浄・切断されます。循環型の閉ループ経済のために取り組んできたFREITAG は、その組織体系も循環型です。現在もフライターグ兄弟の経営する同社は2016年、古典的なヒエラルキー構造を廃止し、自己管理に基づく体系であるホラクラシーに転換しました。
マルクスとダニエルは自らのイノベーションによって、意図せずにバッグ作りの世界に革命を起こしたのです。彼らのビジネスはチューリッヒからヨーロッパの主要都市へ、さらにはアジアにまで広がり、FREITAGは大都市を自転車で移動する個性豊かな人たちの「非公式な必須アイテム」となりました。日本でもたちまちヒットしたことがうなずけます!
日本での大成功
この2人のスイス人の兄弟が新市場開拓のために来日した1996年、日本は「自転車ブーム」の真っただ中でした。そのためメッセンジャー・バッグの人気が高く、FREITAGの製品も都会の若者の間で、瞬く間に人気を集めました。広告に頼らず、口コミだけで人気が広まったのです。しかしながら、動かされたのは日本のファンの側だけではありませんでした。とりわけ"F204 COOPER" というモデルは、東京の有名な築地市場で魚を扱う漁師が氷を運ぶのに使用していたバッグから着想を得た作品です。
現在、FREITAGのバッグやアクセサリーは日本の49か所のパートナー店をはじめ、銀座(2011)、渋谷(2013)、大阪(2018)の3軒のフラグシップ店でお求めいただくことができます。大阪のフラッグシップ・ストアが2018年3月に開店した際には、最新のコレクションを見るとともにダニエル・フライターグに会うため、通りの角まで数百人の行列ができました。フライターグ兄弟は経営者としての業務はもとより、新たなバッグのインスピレーションを求めて、定期的に日本を訪れています。次のアイデアがどこから来るのか? - それはこれからのお楽しみです。