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昭憲皇太后基金・日本赤十字社

関東地方 | 東京都渋谷区

日本とスイスが共有する人道的理想は、世界の赤十字運動の発展に大きな影響を与えました。

人道的活動に携わる皇室

毎年何百万人もの日本人や外国人が明治天皇と昭憲皇太后を祀っている明治神宮を訪れます。百年以上前、激動の時代に日本を統治したことで知られている明治天皇は、歴史書に登場する回数や観光客の間での知名度という点では際立っているため、昭憲皇太后はどうしてもその陰に隠れてしまいがちです。しかし、日本と世界に残した人道的社会事業の遺産という観点では、おそらく同様に素晴らしいものがあります。

昭憲皇太后、1872年

昭憲皇太后(1849-1914)は、「意思が強く、実行力のある女性」と評され、宮廷改革の任務を背負っていました。皇太后の主な関心事の一つは女子教育であることから、女性教師養成のための大学の支援を行いました。活動は日本国内にとどまらず、1912年には、スイスジュネーブで数十年前からはじまっていた国際赤十字の平和活動を支援するために10万円を下賜し、昭憲皇太后基金を設立しました。

ソルフェリーノの思い出

オーストリア軍に勝利したフランスとピエモンテ=サルディニアの軍隊。スイス系イタリア人アーティスト、カルロ・ボッソーリによるイラスト

1859年に赤十字の原型が生まれました。スイスのビジネスマンであったアンリ・デュナンが、イタリア統一戦争の激戦地ソルフェリーノに出向いた時のことです。40,000人以上の兵士が、医療救援も受けずに戦場で死傷しました。その後、数日間、デュナンと地元の人たちは、何千もの負傷者に手を差し伸べて救援活動に従事しました。この一件がデュナンを突き動かすことになり、スイスに戻った彼は、戦場において敵味方の区別なく負傷者の救護にあたる、国の救済組織をつくることを提唱し、ジュネーブ条約制定に向けた道筋を示しました。

アンリ・デュナン (1928-1910)

数年後の1863年、デュナンとジュネーブから来た5人により国際負傷軍人救護常置委員会(通称5人委員会)を結成しました。これが、のちに赤十字国際委員会の誕生に発展していきます。スイスの国旗を反転させた白地に赤の十字マークを施した旗が採択されました。世界最大の人道主義組織となっていくわけですが、傷病兵を救護し、救護する活動自体を中立なものとすることを定めたジュネーブ条約に、12カ国の代表が調印しました。1919年には、ヨーロッパ各地あるいは世界中で結成された赤十字社をとりまとめるための、赤十字社連盟(今日においては、国際赤十字赤新月社連盟として知られています)が設立されました。その中には、日本赤十字社もありました。

日本における赤十字運動

近衛忠煇氏((日本赤十字社社長)とペーター・マウラー氏(赤十字国際委員会総裁)

南西戦争の犠牲者を救済するために、佐野常民(1822-1902)により、「慈善団体」として1877年に創設された日本赤十字社は、現在は世界にある187の赤十字社の中でも最大規模を誇っており、2014年時点で、個人会員960万人と、法人会員12万に支えられています。近衛忠煇により率いられた非政府組織 [日本スイス協会へのリンク] は、国内外で活動を行なっており、国際法の尊重、災害対応の調整、献血の募集、教育および医療プログラムの実施、福祉サービスの提供などを訴えています。

日本赤十字社は災害対応の専門家です (©日本赤十字社)

日本赤十字社は全国で献血事業を行っています (©日本赤十字社)

昭憲皇太后は、当初から日本赤十字社を奨励し、日本の赤十字運動に大きな影響を与えました。赤十字国際委員会、国際赤十字・赤新月社連盟で構成される昭憲皇太后基金管理合同委員会により運営され、日本政府、日本赤十字社、皇室、明治神宮からの寛大な支援により、基金は、1912年の1万円から2018年には、約17億円にまで拡大しました。創業以来、約2.2億円を拠出し、各国の国際赤十字や赤新月社の発展と活動に大きく貢献しました)。

日本赤十字社の活動資金は寄付によるものです (©日本赤十字社)

被災者に食料を配布する赤十字のボランティア (©日本赤十字社)

毎年4月11日(皇后両陛下の崩御記念日)、赤十字国際委員会、国際赤十字・赤新月社連盟で構成される昭憲皇太后基金管理合同委員会によって助成金の配分が行われ、結核プログラム、救急訓練、献血、地域の活動など幅広いイニシアチブに配分されます。世界中の150以上の各国赤十字社と赤新月社が、皇后両陛下の慈善事業により恩恵を被りました。まだ課題はあるものの、スイスと日本の理念のおかげで、世界で多くのことが成し遂げられてきています。

マレーシアの赤新月社: 即応隊(RDS)教育プログラムのための機材の購入 (©日本赤十字社)

バヌアツ赤十字社: 訪問を通じて最も脆弱なコミュニティーを力づける若者 (©日本赤十字社)